PR TIMESに気になるプレスリリースがあり、取材依頼をさせていただいたところ快諾いただけたのが、高知県にある安芸市さんです。地域のキーパーソンを巻き込みながら行政の方で、チャレンジを支援するプラットフォームを構築する。地域で事業者がコンソーシアムを組んでという事例は耳にしますが、安芸市さんのように行政が地域の挑戦を後方から支えるプラットフォームを構築する事例は聴いたことがなく、安芸市企画調整課の川谷さんにお話をうかがいました。

《安芸市さまのプレスリリース》
地域の“もやもや”から始まる共創へ。高知県安芸市、地域共創プロジェクト始動!
A:安芸市企画調整課の川谷さん
R:REUSED
後方支援プラットフォームで「疲弊」「もったいない」をなくす
R.まずは高知県安芸市についてお教えください。
A.安芸市は高知県東部にあり、海山川に囲まれた本当に自然豊かな場所で、農業、漁業などの産業があります。ゆずの生産量は日本一です。三菱グループの創業者である岩崎彌太郎さんの出身地でもあり、明治時代の時計台「野良時計」や、武家屋敷が立ち並ぶ「土居廓中」などの歴史的景観、朝ドラの「らんまん」の冒頭シーンのロケ地にもなった伊尾木洞もあります。
安芸市には地域のために活動をしている人が多く、その中にはUターンで安芸市に戻ってきた方々もおられます。地域共創プロジェクトを始めるにあたり、話を聴く中で行政側でも再発見することが多くありました。安芸市は人口減少や担い手不足などの課題に直面しています。だからこそ、今、地域にいる人や、地域で生まれている活動を大切にし、そこから新たなつながりや次の活動へとつないでいくことが、これからの安芸市の未来につながっていくのだと思います。

R.安芸市地域共創プロジェクトについても是非お教えください。
A.今回の地域共創プロジェクトでは、すでに活動をしている人を後押しできるようなつながりを拡げ、挑戦しやすい環境をつくり、それを次の新しい挑戦へつなげていくための地域のプラットフォームづくりを目指しています。これまで、さまざまな分野で、多くの方々が地域のために行動を起こしてこられました。ただ、取組の中での情報発信、事務作業、協力者の獲得などに疲弊していく現状がありました。活動そのものだけでなく、付随する業務の負担が大きくなるということですね。行政としては新しい価値を直接つくるのではなく、地域の方々がこれまで取り組んでこられたことや、これから取り組みたいと考えていることに対して、より目標を実現しやすくするためのプラットフォームづくりを行います。
最初から完成形というわけではなく、使いながら皆で本当に必要な仕組みに育てていきたいです。市民、事業者、団体、市役所、それぞれの強みを生かし、安芸市をよくしたいという想いがあります。行政は後方支援に徹します。
R.良いものの点在、は様々な自治体が直面している現実であると思いますが、そこから一歩踏み込まれるきっかけはどのようなものだったのでしょうか。
A.以前、安芸市内で起業された女性2人のアイデアで東洋的漫遊祭というお祭りが大規模になされておりました。トゥクトゥクが街を走ったり、ターバンを巻いた人がいたり、地域の皆が知っているお祭りだったのですが、3年ほど続きましたが、その後は休止しています。
要因としては、道路の使用許可や協力してもらえる店舗の確保など、先ほど申し上げたような、活動そのものとは別の付帯業務に多くの手間がかかることがありました。何か新しいことを始めようとすると、まずは身近な人たちで集まって取り組むことが多いと思います。ただ、活動を続けていくためには、身近なつながりだけでなく、地域のさまざまな人や事業者とつながり、力を借りながら広げていくことも大切です。もし、そうしたつながりがあらかじめできていれば、活動を継続するための負担を減らし、もう少し長く続けられたのではないかと思います。今回のプラットフォームには、そうした「せっかく生まれた活動が、つながりや支えがないために続かなくなってしまう」という「もったいない」をなくしていきたいという狙いもあります。

挑戦の連鎖が生まれる安芸市へ
R.今回のワークショップに参加された方々はどのような経緯でご参加されたのでしょうか。実際にワークショップを行われての所感も併せてお教えください。
A.今回のワークショップについては、安芸市で事業をされている方、取り組みをされている方に行政の方から声をかけさせていただきました。農業・漁業・宿泊業・飲食業・建設業・伝統文化・広報など活動分野は異なれど、安芸市をよくしたいという想いは共通している30代~50代のキーパーソン11名です。ワークショップにおいては、こちらから話題を振らなくても目指したい安芸市の姿を皆が積極的に語ってくれました。当初1人あたり5分を予定していましたが、5分だと全然足りない(笑)ということで、倍の10分はお話いただきました。
「大人も子どもも遊べるまち、体験する機会を通じて新しい価値創造を行う。」
それぞれのお立場からの話でしたが、安芸市をこうしていきたい、という画が見えてきました。日頃は接点がなくても、一緒にできそうだねという声も上がり、皆でやったら何かできそうという雰囲気でした。地域の未来を他人事ではなく自分事として捉えてくださっている方々が多くいるということを改めて感じました。また、グラフィックレコーディングを取り入れてみたりと運営する上での工夫も取り入れ、参加者からの反応も良かったですね。
出てきたアイデアをどのように次につなげていくか、ですね。

R.今後において、まず到達すべきマイルストーンとしてはどのようなものが考えられそうでしょうか。
A.実際に一つの新しい挑戦が生まれることです。大きなプロジェクトではなくても一歩踏み出す人が生まれ、その一歩が次の方の挑戦につながればと。後方支援のプラットフォームを活用していただき、どのような支援が必要なのかを探っていきたいです。
この取組は1~2年のスパンで考えていて、挑戦の連鎖を生み出すことができればと考えています。安芸市の漁師の方が「どっぷり高知旅」というプログラムの中で安芸市に興味をもってくださった方に体験を提供しておられるのですが、雨天時には提供ができないんです。そのような時に、代替ワークショップを提供できるような体制も地域共創プロジェクトの中で構えられないかなと。せっかく安芸市に関心をもってくださった方に機会損失することなく安芸市の魅力を感じていただきたいです。
大人の本気が子どものチャレンジに
R.安芸市さまの取組は他の自治体にとっての示唆にもつながると感じます。理想と現実のギャップを埋めるうえでの重要な要素はどのような点になりますでしょうか。
A.本音をいうともっと進めていきたいところです。が、使っていただくのはキーパーソンの皆さまになります。行政にしかできないこと、地域の人だからこそわかることがそれぞれあり、地域の方の視点を常に忘れないように意識しています。すぐに地域が変わるということはありませんので、最初から大きな成果を求めすぎないようにすることもポイントですね。新しいことが起こり、それが次につながり地域の変化につながっていく。
「大人も子どもも遊べるまち」と申しましたが、子どものために、ということに拒否をする人はいませんね。子どもが遊べる自然版キッザニアのようなものはどうか、などのアイデアもワークショップで出ていました。

R.2030年がSDGsのターゲットイヤーなわけですが、2030年をどのような状態で迎えられていると理想的でしょうか。
A.挑戦することが特別なことではなく、日常になっている状態です。1人の挑戦を地域の人が応援して、次の挑戦する人が現れて、というサイクルですね。
子どもがそれを日常の中で目の当たりにする、大人がまずは本気で夢中になっている姿を見せる。それが身近にあれば、チャレンジする子どもが増えていくのではないかと思います。
安芸市の中で人が人の挑戦を応援する、挑戦が次の挑戦につながっていく。あのまちに行けばやりたいことが実現できる、となればそれに惹かれて来る方も増えるかもしれません。
(編集後記)
今回の取材で印象に残った言葉は「挑戦の連鎖」です。プラットフォームの構築についても、アジャイルにトライアンドエラーを繰り返し、あるべき姿に近づけていくというような、いい意味で私のイメージする行政の在り方とは異なっていました。
まずは1つの成功事例をつくり、それがきっかけで次の挑戦が生まれる。そんな連鎖を繰り返していくうちに、1~2年後には、かなり面白い展開になっているのではないでしょうか。
挑戦したいけど、自分にできるかな、と二の足を踏んでいる方は、ぜひ安芸市に足を運んでみてください。
