箱根駅伝への夢破れ、自分探しの海外バックパッカー旅の中で出会った家具の世界へ~SIDEROLL FURNITUREの小川さんに聴いてみた(前編)

箱根駅伝への夢破れ、自分探しの海外バックパッカー旅の中で出会った家具の世界へ~SIDEROLL FURNITUREの小川さんに聴いてみた(前編)

福岡、東京の二拠点生活をされながら、
家具ブランドSIDEROLL FURNITUREを経営されている小川さん

自然をこよなく愛されている小川さんの在り方や
家具づくり、事業への考え方について、
インタビューさせていただきました

サイドロール ファニチャーの公式ホームページ。 「Life Styleをより豊かに」をコンセプトにプロダクトの紹介を 中心としたECサイト。
sideroll-furniture.com

R:REUSED
O:小川さん

小川さんのバッググラウンドを表現した「SIDEROLL FURNITURE」

R:簡単な自己紹介からお願いします!

O:小川 健太朗といいます。現在37歳です。
SIDEROLL FURNITUREの代表兼デザイナーとしてメインである家具
(椅子・テーブル・ソファー・シェルフなど)をはじめとして、
最近ですと、おもちゃなどの小物やインテリア全般などに関わる仕事をしています
東京都出身で、大手の家具のメーカで15年ほど仕事をしていました。
最初の10年間は本当に下積みからで、インパクトを片手に仕事をしたり、天井裏に上ったり、
施工にも関わっていました、その後、インハウスデザイナーとして5年くらい働いていました。

R:学生時代に、家具に関わることを学ばれていたのですか?

O:実は私、もともとは箱根駅伝を目指して大学に進学したんです、
ただ、残念ながら早くに身体を痛めてしまい、その道を断念せざるを得ませんでした、
1か月くらいは、ただただボーっとしていましたね、
その後、両親に促される形でバイトをはじめ、そこで貯めたお金で、
バックパッカーとして、かっこよく言うと「自分探しの旅」をするため
主にアジア中心でしたが、海外を回っていました。
当時はネットもそこまで発達していなかったので、
古本屋で地球の歩き方を買ってましたね。
オーストラリアを1周した経験のある叔父の話を聞き、たまたまオーストラリアにいって、
東海岸を回り、メルボルンでドミトリーに泊まったのですが、
そこに偶然ですが、日本人で住宅デザインをやっている人が大きめのプロジェクト終わりの
休暇で来られていて、そういった仕事があるんだと、知りました。その方のお人柄も素敵でした。
その後、独学で図面やスケッチについて学び、家具のメーカーに入社したという形です。
海外に行くというのは、自分を客観視するうえでも重要だと今でも考えています。

R:私は海外に行くと、日本はなんだかんだ選択肢が多いな。と感じさせられます。
そのような考え方の変化などはおありでしたか。

O:私もまさにそれを感じましたね、独学で始めた私が
こうしてデザイナーとしてお仕事できているのも、
日本の環境ならではだと感じていますね。

R:SIDEROLL FURNITUREについてもご紹介ください!

O:自分のバックグラウンドを表現したくて作ったブランドです。
SIDEROLLという単語ですが、最後にeが付くと、デンマーク語で
副次的な役割という意味になります。
HPにも掲載していますが、あくまで主役が生活する人、その生活をわき役として支えたい、
そのような想いを込めています。
デンマークには、考え方や生活の在り方など多くの影響を受けました。
日本とは異なる形で恵まれている国、その国の中での家具の位置づけなど
生活の中における家具の位置づけ、私の考えの根底には北欧での学びがあります。
企業の在り方などにおいても、利益ももちろん大事、だが、それ以上に、
社会にどのように還元できるか、ということを考えられています。

R:ヴィンテージアイテムの輸入という方向にはいかれなかったんですね

O:現地の価値観に触れて、それを現地の家具のバイヤーという形で、
日本国内で提供する、というのも一つのやり方で、それも素晴らしいと思います。
ただ、私の場合は、北欧家具のエッセンスを吸収しながらも、
やはり、北欧の人と日本人ですと体系等も当然異なりますので、
日本人に合う形でそれを提供したい、と自分で創るという選択肢をとりました。

R:SIDEROLL FURNITUREというネーミングはかなり長い期間考えられたんですか?

O:1日くらいで決めましたね、
うちって、ファブレス、自社では工場を持たないブランドなんです、
そうなったときに、つながり、がとても重要で、現在は数社の工場様と
主にはお付き合いさせていただいています。
取引先に関して、工場に限らず、上下の関係でなく、対等な横の関係を大事にしていきたい、
そのような意味もSIDEという言葉には込めています。
自分の目の行き届く範囲で仕事をする、ということにもこだわっています。
私の事業においてトレーサビリティは重要な点です。

R:素材へのこだわりを非常に感じるのですが、そのこだわりはどこからきているのでしょうか。
また、どのような基準で選定されているのでしょうか。

O:私自身、SIDEROLL FURNITUREのブランドとは別に、
小川 健太朗個人として、デザイナー活動もしています、
あるクライアント様から、デザイナーとしてお仕事をお受けした際に、
「材料についてどれくらい意識していますか?」という質問を投げかけられました。
当時の私の回答は「意識していません」でした。すると、熊野古道の林業塾のような
場所に連れて行ってくださり、日本の林業について学ぶ機会をいただいたんです。
そこには林業に精通された方が多く関わられていました。
そこで、日本にある木というのは針葉樹がほとんどで、家具向きとされる広葉樹が
ほとんどない(希少なもの)という現状を知ることとなりました。そして日本の林業の衰退についても。
私自身、キャンプなど自然をフィールドにした遊びが大好きなので、自然がなくなると困るんですよね。
個人的な想いも重ねてではありますが、自然を守りたいと感じ、
北海道のナラ材を使い家具をつくる、ということを決めました。
針葉樹を使用しての家具作りももちろんトライしましたが、
私の表現したい世界観を表現するには、材料として難しかったんです

R:熊野古道は知っていますが、そんな塾があるんですね、
その他の素材についてのこだわりもお教えください!

O:木材に限らず、環境負荷の少ない素材を使っています、
今のクライアント様は飲食の業態なども含めて、お子さんがいるシーンが
多く想定されますので、例えば塗料についてもお子さんが舐めても大丈夫ということでしたり、
経年変化により、木の良さを生かせるモノを使っています、
生地については、長く使う、ということでいうと、耐久性も大事になってきますので、
ベルギーのテルモルスト社のMONGOマンゴーというアップサイクル生地を使っています。
先ほど、自然遊びが好きと言いましたが、モノづくりにおいて、自分のライフワークとの
トレードオフなどがあってはいけませんので、ゼロベースで自分で探しています。
ファブレスというところでいうと、日本には少人数でやられている
本当に腕のいい職人さんたちのいる工場がたくさんあります、
彼らは表には出てきませんので、そのような工場を1軒ずつ回り、
私のつくりたい家具について共感してくださる提携先を見つけてきました。
当然、会社員時代の私と、今の私で状況は異なりますので製造を
お願いしても断られることもありましたよ。

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箱根駅伝を目指すも挫折し、自分探しののちに家具の道へ、
というエピソードからのスタート、
靴の道をあきらめ今にいたる私的にはとても共感できました。
ブランド名、素材選びに込められた想いなどもうかがうことができました。

次回は、小川さんのお考えなどを
さらに深堀していきます!