サーキュラーエコノミー探訪記 ~ヴィンテージオーディオ修理工房CMJさんを訪れる(中編)~

サーキュラーエコノミー探訪記 ~ヴィンテージオーディオ修理工房CMJさんを訪れる(中編)~

▼前回のおさらい

前回はCMJさんのコロナによる変化などを含めて
顧客層の変化をうかがっているうちに、

気づくとレコードの良さについてヒートアップし、
レコードの良さについて理解する、という
まさかの展開となりました。

その中でも、コロナによる「おうち時間」の増加が
思わぬ形で修理依頼につながっていたり、

修理依頼をされるお客様の年齢層が変わってきている、
という点は興味深かったです。

CMJさんは世の中でも珍しい、
一般顧客向けにヴィンテージオーディオの修理を提供されている企業様、
ということで、

改めてリペアビジネスについて聞いてみます。

R:REUSED
C:CMJさん

▼CMJさんに聞いてみた

R:前回、軽くふれさせていただいた、人財についてですが、
オーディオ修理のエンジニアさんはどのような方々なのでしょうか

C:大手のメーカーさんで技術職で働かれていた方が、多いです。皆さんご存知のメーカーの出身者などです。
今、メインでリペアを行われている方は柔軟性もあり、2年前だとおそらくできなかったような、
リペアサービスを提供することが可能になっています。

R:エンジニアさんて、職人、という印象が私の中では強く、我が道を行く、というイメージがありますが、
どのようなエンジニアさんをCMJさんとしては、求めてらっしゃるんですか

C:柔軟性がある方、ですね。技術がある方は、ともすると、自分のやり方に固執してしまい、
結果として、「何のためにリペアしているんだろう」と、当初の目的から外れてしまう恐れがあります。
我々としては、あくまでお客様の要望にできるだけ技術を活用して応える、
ということをモットーにしています。
今はご時世柄と言いますか、報道で取りざたされる以上に、技術者の方は世の中に出てきておりまして、
30~50代の方中心に、様々な方が、働きたい、ということでお越しになられます。

R:今、おっしゃられた、お客様の要望、でいいますと、最近の記憶に残っているエピソードなどは
おありだったりされますか?

C:電気蓄音機の案件ですね、通常弊社ではお受けしておらず、一度お断りさせていただいたんです。
ただ、お客様の熱意に心を動かされまして、案件としてお受けいたしました。
当時、社内に対応できる人間がおらず、修理技術をもっている職人探しからはじめました。
当時、同時に3件の依頼があり、4名がかりで、1年半ほどかかり対応させていただきました。
元の形に戻すことをCMJのポリシーとしておりますが、その時に関しては、パーツを新しくつくり、
見た目は維持しつつも、中身は新しいものに作り替えるような施術を行わせていただきました。
アメリカやイギリスでは、古いモノの中身を新しいモノに替えるということはすでに文化としてありますが、
日本国内だとまだまだそのような文化は定着していないので、珍しい取組だったと思います。

R:途中でおっしゃられたCMJさんのポリシーについてもう少し、お教えいただけますか?

C:我々のポリシーはシンプルですが、「壊れている物を元に戻す」ということです。
新しく入られたエンジニアさんのおかげで、直せるものの幅が広がりました。
例えば、入手の難しいパーツなどを自作してしまうなど、イマジネーションに溢れています。
3Dプリンターで、パーツをサードパーティー的に創り出したい、という願望もありますが、
費用対効果を検証中となっています。

R:お話を伺っていても、リペアされる職人さんの技術は一朝一夕に見につかない、ということが分かります。
外部向けの技術指導もサービスとしてされているようですが、
社内での技術の継承はどのようにされているのですか

C:今はエンジニア同士での対話の時間を意識的に設けるようにしています。
また、ある方ができなかった依頼品について、他の職人さんにやっていただくなどして、
技術力の確認も行っています。今、取り組んでいることは
ゼロベースのヒトをどこまで育てられるか、ということです。
大体半年から1年ほど、最低限の技術を習得するまでに要しますね。

R:CMJさんの技術は高いということが伝わってきていますが、そんなCMJさんでも
苦労されていることなどはおありですか?

C:パーツの供給不足でしょうか、例えば、ピックアップについて、
元々1社により独占的につくられていたパーツですが、
すでに供給元がなくなっており、市場に新品が出てくることはありません。
ゆえに中古の相場も年々上がってきています。

CD、MDデッキの修理の中でも、このピックアップに関するものは年々費用が高くなってしまっています。
とはいえ、CDもいい再生機器で聴くと、まったく音の再現性が変わってくるため、
できうる限り修理対応はさせていただいて
良い環境での音楽を楽しんでいただきたいと考えています。

その他の苦労でいうと、デジタル系になるのですが、技術がブラックボックス化されており、
そのままエンジニアの引退によりメーカー自身も直せないという
状況が発生してしまっていることが業界的な課題であると認識しています。
デジタル系、ここはこれから解決すべき課題の一つです。

~今回は修理について、お客様のこと、エンジニアさんの事、業界の課題、
と深堀させていただきました。が、前編・後編だけでは収まりきらず、
結果的に、前中後編にてお届けさせていただきます。~