みなさま、フロッキー加工という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
生地などの表面に接着剤を塗り、短い繊維を静電気などの力で垂直に植え付ける加工方法で、ベルベットのような高級感が演出されます。プレスリリースで「デニムフロッキー素材を用いたDENIFLO誕生」という記事を拝見し、取材をお願いさせていただいたところ快諾いただけました。創業昭和35年の歴史ある会社の中で次々と新しいことを手掛けられる伸栄プラスチック代表取締役の近藤さんにお話を伺いました。DENIFLOの詳細については、是非プレスリリースの記事をご参照ください。

伸栄プラスチックさまホームページ
DENIFLOに関するプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000186491.html
K:近藤さん
R:REUSED
仕事への誇りを
R.まずは自己紹介と御社のご紹介をお願いいたします!
K.近藤です。伸栄プラスチックという会社の代表をしています。野球少年時代を経て、私は元々アパレルで起業したい、と考えていました。ゆえに大学に行くことにあまり価値を感じていませんでしたが、大学くらいは出ておきなさいと周囲に言われて渋々勉強、という状況でしたので、あまり入れる大学もなく、夜間大学に行くことになりました。その時に3年ほどは国分寺の服屋さんで働いていたのですが、自分自身そのときから服が好きだなと感じていました。その後、20歳過ぎくらいの時期に父親に体調が悪いと言われて、まずはアルバイトとして八王子に戻ってきました。当時の弊社はまさに自動車産業にぶら下がっている状態で、上が白いモノでも黒といえば黒、そんな時代でしたね。
R.仕事へのプライドを持つことがなかなか難しそうです。。。
K.皆頑張って、時に深夜まで働いている、そのようなときに、取引先が来て、たった一つのミスに対して「全員で不良品を製造しているのか」という厳しい言葉をかけて帰られました。100個やろうが1000個やろうが、1個でも不良があればダメな会社というレッテルをはられてしまう。それに対して「なんかちがう。不良アイテムをつくろうとしてつくっている人間などいない」。職人さんそれぞれが植毛をする際にはそれぞれの職人さんなりの経験値を詰め込んでいる。もっと日の目をみてもいいのではないか。アルバイトという立場から客観視して思っていました。
R.仕事を認めてもらう機会をつくることはとても重要なことですね。
K.ではどうすればいいのか。自分たちで価値創造を行うべきだと。しかし、社内では自己主張(自ら価値創造を行うこと)をするとはいかがなものかと、父親も含めた当時の役員からは否定されました。同じものを繰り返しつくる中では一つ一つにプライドを持つことは難しい。そこで自分も好きだった車のカスタム屋さんに営業をかけました。50社ほどと代理店契約を結び、注文をとっていただければ、当社がフロッキー加工をしますという座組をつくりました。スパイダーという名称でやっていましたね。仕事はそこそこもらえ、エンドユーザーさまからはありがとう、という言葉をいただけるようになり、現場のメンバーがお客様からの感謝に触れるという機会はつくれましたが、受動的であるという状態は変わりませんでした。自分らの立ち位置を考えた際に高い地位(上流)にいるとはいえず、底辺に位置しているなと。その立ち位置では予算次第で契約を切られてしますし、事業の構造・自分たちの立ち位置を変えなければ、先々厳しくなるなと。

上流に、から生まれたSo.というブランド
R.そこでSo.というブランドが生まれたわけですね。
K.どうすれば上流からプロジェクトに入ることができるだろうか、デザイナーさんやクリエイターさんに必要性を感じてもらえればそれがかなうのではないか、ということで、東京のデザイナーとのマッチングPJに参加して、あるデザイナー集団と出会い、仕事を共に始めることとなりました。そこで独自のブランドを立ち上げないかということでつくったのがSo.というブランドです。
R.So.という名称の由来についてもお教えいただきたいです!
K.創造の創、装いの装、とてもという意味合いでのSo、それらの想いが込められています。我々の仕事は見え方、見せ方を変えることで変えられるのではないか。先ほど事業構造を変えなくてはという点に触れましたが、社内の9割は自動車関連の仕事が占める中で、外部環境をみると自動車の生産台数は減少傾向にある。So.という独自のブランドでの発信を行うことで、自動車関連以外の仕事を創出する。具体的には、店頭ディスプレイや、内装の壁面全部を請け負ったり、著名なアーティストの方の作品に使っていただくなど。So.というブランドに関する取り組みにより、当社のフロッキー加工の用途の可能性が拡がりました。

危機感と気づき
R.コロナ禍にも色々と考えさせられたとか。
K.フロッキー加工では通常ナイロンの短繊維を扱いますが、以前より欧州の企業さまとのお付き合いの中で天然素材が求められ続けていました。弊社で店舗の内装を担当させていただいている某ブランドさまからも毎年のように同じオーダー(天然素材がないか)をいただいています。理屈上はできなくはないのですが、強度が壁となっていました。ちょうどそのような折にコロナがきました。コロナ禍で材料の供給がストップし、小さい規模の会社さんが軒並み廃業してしまいました。フロッキー加工の材料を仕入れようとすると10キロ、20キロ単位でしか買えず、小さい規模の会社であれば1キロもあれば十分だったりしますので体力が持ちません。廃業してしまった企業さまからお仕事を回していただいたりということもありましたが、他人事ではなく明日は我が身という出来事でした。
R.先ほど言及いただいた見せ方などについて気づかされる機会もあったとか。
K.フロッキー加工で家具をつくれないか、というお話をいただいたことがありました。が、国内企業は品質基準が高く対応は難しかったです。しかし、海外ではフロッキー加工で家具をやっている会社があると耳にしました。国内企業はさんざん安全面や傷について言及するわけですが、傷も捉え方にとっては味になるでしょう。というのが海外における考え方で、見せ方や言い方を変えることがやはり大事なのではと気づかされました。
従来の枠を超える、DENIFLOの誕生
R.今回、DENIFLOに関するプレスを見て取材のオファーをさせていただいたわけですが、DENIFLOはどのような経緯で生まれたブランドになるのでしょうか?
K.京都にある材料の調達先の方とのお話の際に、現状についてお話をさせていただき、その枠を飛び越えたいとお伝えしました。なにか変わった材料ないですかね。と持ち掛けると、デニムの残糸があまっていて何か活用できる方法はないか、と材料を整えてくださいました。それがデニムとの出会いです。展示会ではデニムメーカーさんからもうちの素材でできないかと相談をされました。糸であればDENIFLOでいいですが、布の状態で余っている場合、国内では余りものであっても、糸の入手さえ難しい地域においては立派な素材であり、その地域に日本国内で余った布を素材として送り、デザイナーさんにも協力してもらいデザインを決めたうえで、現地で縫製をしてもらい服にして商品として販売してもらう。日本国内の端材から現地に産業が生まれたら素晴らしいことですよね。DENIFLOという文脈からは外れますが、私がゆくゆくかなえたいことの一つです。

R.素晴らしい目標ですね。その一方で課題もおありとか。
K.DENIFLOについては課題もあり、傷という面ではデニム素材の場合、それが味という解釈をしてもらえますし、素材も綿なので、天然素材という点もクリア、しかりフロッキー加工の工程上使用する接着剤、これが問題でした。展示会でインドの方に実際にその点を指摘されました。ただし、その課題についても解決策が見えてきており、それが実現すれば、天然素材でのDENIFLOづくりが可能になります。他の課題としては、フロッキー加工の現場のイメージですね。いわゆる3Kと国内外問わず見られており、そのイメージをいかに払しょくするか、見られ方を変えられないか。ということですね。
視野を広げ、布石を打ちまくる
R.近藤さんの活力の源や意識しておられることについてもお教えいただきたいです。
K.反骨心ですかね。今思うと、以前は視野が狭かった。社外にも目を向けて視野を広げてみることで感じ取れるものが変わってきました。DENIFLOという商材を通じて、無理だと思っていたことが新しい価値創造につながる、新しいものができた、その感動の場に立ち会えればと考えています。我々のプロダクトを通じて、お客さんの視野が拡がればうれしいですし、自分たちが手掛けたものにより世の中で新しい価値を生み出せていると感じられれば最高です。今も新しい刺激を自分に取り入れることも意識的に行っていますね、刺激が次の興味につながっていきます。
R.どのような体制でチャレンジをされているのでしょうか。
K.社内のメンバーの協力ももちろん大事です。ただし、内側にいるからこそ考えが凝り固まってしまっている面もあります。変化の大きく早く激しい時代においては、これまでの経験も当然大事ですが、これからどのような戦略上のオプションを持つことができるか、によって会社の進む道や、会社の持続可能性も変わってくるのではないでしょうか。これまでにないことを行う上では外部の方々との関係づくりも重要視しています。もちろん社内での反対意見があることは考える機会にもなりますのでありがたいです。社外にもアイデアのヒントをくれたり、挫折しそうな時に支えてくださる方々など大事な仲間がいます。
R.これまでのチャレンジとそこから得たものについて教えてください。
K.産学連携などの様々な取り組みを行ってきました。世界を変えるポテンシャルのある取り組みに参画させていただいたこともありました。得たこととしては布石(点)を打つこと大切さへの気づきですね。布石をたくさん打つと、点と点が線になり、時に面にもなります。形になるならないはおいておいて、どんな案件でも自分たちができることはやってきました。仮に形にならなくても得るものはあります。やって無駄なことはないですね。いつ報われるかはさておき。。。とにかく布石を打つことです。

上流にきた実感
R.最近あった嬉しかったエピソードなどあればお教えいただきたいです!世の中の変化についてお感じになられていることがあればそちらも併せて。
K.嬉しいことでいうと、台湾のスタートアップとの協業のお話があり、今度当社にお越しになられることになっており、実装へ向けて前向きに進められていることですね。変化というところでは、これまでは麻を使ってほしいなど具体的な素材を指定されることが多かったのですが、最近では雰囲気で依頼をされることが増えてきました。ナイロンでデニムのような雰囲気を出せますか?など。やわらかい雰囲気を出したい、見た目や触感をナチュラルに、のように、より抽象的なオーダーも増えてきました。底辺ということを冒頭の方で申し上げましたが、上流側に着ている感触もあります。
R.伸栄プラスチックさんを〇〇業(業種という意味ではない)と表現するとすると、何業と言えそうでしょうか?
K.創造業です。相手に思ってみなかった画を見せられるか、共創をすることでお互い想像もしていなかった地点までたどり着けるか。差別化についてビジネスでは言及されることが多いですが、うちは差別化より自分たちらしさですね。自分たちらしさには、品質、チームワーク、など色々ありますが、1人1人のらしさの集合体として会社があり、その総合力が結果的に評価につながっていくわけです。
先代、これからについての想い
R.今につながる道をつくってこられた先代社長についても触れていただけますか。
K.当時会長だった祖父になぜこの会社を始めたのかを聴いた際に、この業種がない、ということと、納品すると驚き喜んでくれる、そのうえでお金をもらえるなんて、こんな最高な仕事はない、と話してくれました。一方で父親は原点を見据え、未来に飛躍する、ということを掲げ、自分たちの存在意義として、会社が存在して人を雇えているだけで社会に貢献できている、と言っていましたが、一緒に働いているうちにはその意味があまり理解できていませんでした。私にとっての社会貢献は大きなインパクトを出すこと、でしたので。弊社は、驚き、喜び、感動を届けようということを大事にしており、その考え方は祖父から受け継いだと思っていましたが、実は父親からも影響を受けているのかなと感じますね。
R.SDGsのゴールイヤーである2030年をどのような形で迎えられるとハッピーでしょうか。
K.事業形態として、既存のフロッキー加工という神栄プラスチック、DENIFLOの切り離しができている。表面加工の選択肢にDENIFLOというものがある。これは事業についてで、弊社のメンバーには、仕事というものは人生を満喫するためのツールであり、そのツールをどう使うことができるか、自分の人生においてのゴール設定において、どう職場を活用するとどう人生に活きてくるか、皆がそのような考えを基に仕事をしてくれるようになっていると嬉しいですね。その「らしさ」の集合体である会社もより強固になっているはずです。それを実現することが私の宿命です。

(編集後記)
インタビューのQ&Aの他にも、物事の捉え方であったり、組織運営の上での悩みでしたり、本当に多くのことをお話させていただきました。初めてお会いしたとは思えないくらい深いお話をたくさん。近藤さんの行動力の素晴らしさは具体的な名称は出せませんが、誰もが知っている企業や大学などとの共創にもつながっています。フロッキー加工のお仕事に従事される方々が仕事に対してプライドを持つことができる状態を自分がつくる、その気概を節々から感じさせてもいただきました。

