箱根駅伝への夢破れ、自分探しの海外バックパッカー旅の中で出会った家具の世界へ~SIDEROLL FURNITUREの小川さんに聴いてみた(後編)

箱根駅伝への夢破れ、自分探しの海外バックパッカー旅の中で出会った家具の世界へ~SIDEROLL FURNITUREの小川さんに聴いてみた(後編)

ここまで前編、中編にわたり、
小川さんご自身の歴史、SIDEROLL FURNITUREの誕生ストーリーや
小川さんのモノの見方について、少しずつ解像度をあげながら
ヒアリングさせていただきました。

後編(最終回)では少し今後(未来)という方向にも
目を向けて、質問をさせていただきます。

サイドロール ファニチャーの公式ホームページ。 「Life Styleをより豊かに」をコンセプトにプロダクトの紹介を 中心としたECサイト。
sideroll-furniture.com

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R:REUSED
O:小川さん

SIDEROLLeな存在に

R:世の中の速度はコロナにより加速した感があります、
速度についてどのようにお感じでしょうか。

O:早いです、例えば商品開発について、以前ですと国内外での市場調査、
社内でのプレゼンを経て、販売決定するまでに2年はかかり、
そこから実際に販売するまでに1年、と商品を販売するまでに約3年はかかっていました、
それがインフルエンサーの方との協業では約1、2か月でできてしまったんですよね、
会社組織を離れて自分のブランドを立ち上げてから気づいたことです、
世の中の流れ、というより自分の中での時間に対する考え方が変わったのかもしれません

R:それは著しい変化ですね、3年が2か月に・・・
その他にもお感じになられたことなどはおありでしたか?

O:起業という観点で見ても、しやすい時代じゃないですかね。
資金調達する方法も、クラウドファンディングなども含めて、選択肢が色々あります。
自分でこれをやりたい、ということがあれば、起業をしない理由はないですよね。
有名な大学から就職をせずに起業するヒトが増えているというのもうなづけます。
弊社の場合でもファブレスの形式をとることで、ランニングコストを下げたり、と、
運営費用を軽くするための選択肢も増えていますしね。

R:小川さんの起業の仕方は少し特殊といえば特殊ですよね?
家具ブランド立ち上げという形での起業はあまり耳にしたことがありません。

O:自分と同じことをできるヒトはほとんどいないと思っています。
リスクも高いので笑
会社に属していた時期に様々な経験をさせて頂けたので
自分のブランドを立ち上げる事ができました。
関係性というのは、昨日の今日でできることではありませんので、これは自分の何よりの強みです。
ステイクホルダーとのコミュニケーションに自分は長けている
ということに、独立してから気がつきました。

R:今の時代に求めらている編集能力ですね。
端材を活用して、おもちゃなどをおつくりですが、
家具業界においては、どこもされていることなのでしょうか。

O:トレンドについては疎いですが、余った材料をなんとかしたかったんです、
親和性について検討した結果、おもちゃなどをつくることにしました。
うちはSDGsなどとは一切謳っておらず、元々自分の中にある自然を大事にしたい
という私自身の在り方から事業を運営しています。
プロダクトにできないものは個人的に買い上げて、薪にしたりもしています。
やっていることが意識せずともSDGsにつながっているという状況ですね。
やりたいことに対して、当然お金もかかりますので、利益を出すことも必要ですが、
思考はミニマルで、必要以上に欲しいとは思っていません。

R:御社のHPにも書かれているところですが、「家具の魅力・意味・役割」
また、小川さんにとっての木材、についてもお教えください。

O:木材というワードに関していうと、山が欲しいんです、植林したり間伐したり、
その木材で家具をつくりたいんですよ、ついでに言うと、その土地にキャンプ場も併設したい、
今は、北海道の国有林や道が管理しているものを使っていますが。
木全体のそびえたっている雰囲気にも惹かれますし、乾燥に1~2年必要だったり、
その過程を親の気持ちで見ていたいんですよね。
木が好きなんですが、それをどのように表現するかには気を配っていますね、
そのために時に自分を客観視して見るようにしています

R:巷ではサステナブルという言葉も目にすることが増えましたが、
サステナブルについてのお考えもお聞かせください

O:まず最初には、プロダクトの良さが来るべき、というのが私の考えです、
それが結果として、地球、日本、林業のためになる、そのような順番です、
サステナブル=いいモノを長く使う、と私はとらえていて、
そのためには、そもそもデザインなどプロダクトとして優れている必要がありますよね、
環境面でいうと、針葉樹を使わないのか、というお声をいただくことも多いですが、
針葉樹を使うとどうしても家具単独での存在感が出すぎて、
わき役としての家具からは離れてしまうんですよね

R:小川さんにとってのウェルビーイング(幸福)について教えてください!

O:プロダクトを通してお客さんに快適な生活を提供できているときや、
お客さんが私の提供するプロダクトでしたりサービスを通じて、
楽しそうに、誇らしそうにされていることが巡り巡って自分の幸せにつながります

R:小川さんの今後の野望について教えてください!
2030年がSDGsのゴールイヤーということで、世界中での一つの区切りのようになっていますが、
2030年、どのような状態になっているとハッピーですか?

O:2030年に向けて、SIDEROLL FURNITUREとして、
ライフスタイルに関することであれば、例えば、飲食やコーヒーなど、
様々なことにチャレンジしていきたいですね、
自社の社員を増やす、という形ではなく、プロジェクト単位で様々な方と
コラボレーションして、事業を展開していきたいとイメージしています。
SIDEROLL FURNITUREって、SIDEROLLとFURNITUREの間にスペースをとっていますが、
そこにはFURNITUREに限らずという意味合いも込めています。
興味のあることに対して柔軟に動いていきたいですね。

R:SIDEROLL FURNITUREを「〇〇業」と表現するとすると、何業になりますでしょうか。

O:質問の回答になっていないかもしれませんが、
「ハブ」というのが私の中でのキーワードになっています。
様々なプロジェクトの中で、その時々で担う役割はなんでもいいんです。
色々なモノを取り持つコネクターになりたいです。
先ほど述べさせていただいたYouTuberさんの企画と職人さんを繋ぐ、などもまさにそれにあたります、
社内にメンバーを多く抱える予定はないと言いましたが、
仕事の進め方としては、自分だけで完結する仕事よりも、
ヒトとヒトとを繋げながら、共創していくような形が好きですね。
例えば、きれいな画を書く、ということであれば、私以外にもそれができるヒトはいます、
私にしかできないこと、そこに拘りをもって、事業を進めていきたいと考えています。

~まとめ~
私がここ最近大事と考えているのが、
「インプットとアウトプットの距離」「ゼロの定義」です。

小川さんのお話をうかがっていると、SNSやYouTuberさんとのコラボによる発信と
受け入れられやすいデザインという形で、お客さんとの距離を詰めて、
実際にプロダクトを使っていただいたりする中で、木材の良さを生かしたその創りにより
長い期間楽しんでいただけるようになっている。この距離の取り方が絶妙だな、と。

途中で通販の話も出ましたが、答えの分かっていることについては。
結局はコストメリットなどに話が寄ってしまいます。
そうではない、新しい価値を自ら提案して、共感者を集める、まさに「ゼロの定義」もなされています。
当然そこには、こちらでは計り知れない苦労もあったことでしょう。

そこは駅伝を目指していた時とおそらくは変わらない、小川さんの「自分らしく」というあり方が
エネルギーになっているのだなと、感じました。

ハブというお話がありましたが、生活における家具のように、
これから出会われるであろう、様々なプロジェクトにおいて、
小川さんがSIDEROLLeな存在として不可欠になっていくんでしょうね。

人生万事塞翁が馬、その時々に起こることは何かしらの意味がある、
今回のインタビューを通じてもそれを考えさせられました。

最後の問いの〇〇業の答えは、もしかすると、
SIDEROLL FURNITUREといえるのかもしれません。。。