箱根駅伝への夢破れ、自分探しの海外バックパッカー旅の中で出会った家具の世界へ~SIDEROLL FURNITUREの小川さんに聴いてみた(中編)

箱根駅伝への夢破れ、自分探しの海外バックパッカー旅の中で出会った家具の世界へ~SIDEROLL FURNITUREの小川さんに聴いてみた(中編)

前回は小川さんの異色なご経歴でしたり、
ブランド名に込められた想い、素材へのこだわり、
についてお聞かせいただきました、

今回も小川さんの在り方などについて
深堀してみます、

サイドロール ファニチャーの公式ホームページ。 「Life Styleをより豊かに」をコンセプトにプロダクトの紹介を 中心としたECサイト。
sideroll-furniture.com

前編はコチラ

R:REUSED
O:小川さん

「Roll」=循環させていく

R:仕事をされるうえで大事にされている哲学などはありますでしょうか。

O:実は私が独立したきっかけというのが、自分自身のバーンアウトなんです、
会社勤めをしているときに、それなりにいいポジションにもつき、。
イタリアで開かれる世界最大の家具の見本市への出展の際、プロダクトの責任者として
活躍していました。常にギリギリの状態で仕事をしていました。
それがコロナの影響で展示会が中止になったりなど予期せぬトラブルも生じましたが、
プロダクトの開発に関してはローンチにこぎつけました。
その瞬間にやれることはやりきった、
という感覚が自分の中で生じてきて、急にモチベーションが下がってしまい、
それまで意識せずとも描いていたスケッチや何でもないような仕事が
できなくなり、怖くなりました。能力以上のことをやり続けていた反動が一気に来たのかもしれません。
その経験や反省を活かし自分で事業をやる上で、パフォーマンスを常に一定以上には保つ必要があると感じました。そのために、トレーニングとブログを毎日書くということを決めて、400日以上は続けています。
私にとっての「自信」とは「自分を信じる」ということでして、
それが現在にもつながっています。
ブログを通じては日々感じていることを言語化してアウトプットすることの重要性にも気が付きました。
その他、発信というところでいいますと、ツイッターを主戦場に、
インテリア系インフルエンサーの方ともコラボレーションさせていただいています。
良いモノも知られないとその良さを体感していただけないですからね。

R:小川さんのクリエイティビティそして、行動の源泉はどこにあるのでしょうか。

O:なかなか難しい質問ですね・・・
全部オリジナルでやるのって、開発費も労力もメチャクチャかかるんですよね、
周囲の人には、なんでオリジナルをやるの、と散々言われましたが、
私にはその質問がピンときませんでした、つまりはつくる必要あるの?ということです、
ただ、すでにあるものをセレクトして販売する、ということと自分らしさが結び付けられず、
自分にしかできないことがしたい、と考えたその先にあったのが自分のブランドづくりなんです、
以前は陸上競技、という形でしたが、自己表現に自分なりのこだわりがあるのかもしれません(笑)
今は家具をメインにしていますが、それが時には言葉でしたり、無形のサービスという形になってもいいと思っています。

R:受注生産をされていますが、どのようなお客さんが多いのでしょうか。

O:サイドロールファニチャーはBtoC向けですが、
デザイナーとして受ける仕事はもう少し幅が広いですね、
その際にもサイドロールファニチャーとというブランドをもっていることで、
クライアント様も私の仕事を理解くださった上でご依頼をくださったりしますので、やりやすいですね。
表現が難しいところですが、今も無理に顧客を広げるつもりはありません。
今は、自分自身の時間をもっとうまく使えるようにしたいですね。
商品一つ一つ、開発するのにもそれなりの時間がかかるんですよね。

R:今の事業を始められて嬉しかったことはどんなことでしょうか。
また、良かったな、とお感じになられている点があれば重ねて教えてください!

O:2021年の11月にカフェの仕事をさせていただいたんです、
大手の企業様の社内ベンチャーで、食品アレルギーをお持ちの方向けにオーダーで
メニューを提供されるというような事業なのですが、
空間プロデュースを担当された企業様から、
その世界観に私の仕事が合うのでは、ということでお声がけいただきました、
自分が大事にしていることを認めていただき、それが仕事につながったということは本当にうれしかったです!
あり方というのは一朝一夕でできることではなく、考え続けてきたことでしたので。

R:ベンチャーという速度感を感じるものと、
小川さんの提供されている世界観のコントラストも興味深いですね!
少し話題を変えまして、プロから見てここはすごい、という家具はありますか?

O:国内、国外とプロダクトとして優れたものはたくさんあります。
国内の家具の6大生産地である、
旭川、飛騨、静岡、徳島、府中、大川のメーカーはやはり優れているプロダクトが多いです。
企業という観点でいうと、カリモクさん、マルニ木工さんは、
生産力でしたり、人材教育でしたり、素晴らしい仕組みをつくられています

R:マルニ木工さんといえば、アップルにも椅子を納品されていますもんね、

O:先ほど、プロダクトの話をしましたが、プロダクトについての良し悪しって
それだけで決めるのが厳密には難しいんですよね、
実際にその椅子がおかれる空間になじむ、飽きのこない椅子、などポイントをどこに置くかで変わりますね。
家具のデザインをしていると、どうしても家具を主役としてみてしまいがちなんです、
私は、気づくと横にありなじむモノという位置づけが良いと捉えています。
例えば、おしゃれな空間を演出したいという場合に、
家具自体のデザインが飛びぬけていなくても、空間として雰囲気を出すことは可能です。
サードプレイスとして有名なコーヒーショップさんなどはそれが非常にうまいです。
私も家具を先に考えるのではなくて、どのような空間にしたいのか、
を先に考えることも大事ととらえています。

R:プロは家具を見るときにどこを見るのでしょうか?

O:マニアックかもしれませんが、構造を見ますね、安全に座れるか、構造に不安がないか、
家具は個人的にはラフに扱ってほしいんですよね。だからこそ安全性は欠かせません。
相棒のように扱ってもらうには、構造が重要です。
椅子をひっくり返して裏を見ると、そこに答えがあります。北欧の有名な家具はそれを満たしています。
例えばデンマークは日照時間が短く家にいる時間が長いんです、
つまりは家具に触れる時間が多い、だからいい家具を長く使うという文化があります。
大手の家具メーカーさんにも、インテリアというものへのリテラシーを
あげてくれたという点で感謝していますね。

R:コロナの状況は家具業界にとって、追い風、向かい風、どうだったのでしょうか。
「おうち時間」などの言葉も目にすることが多かったですが。

O:追い風は吹きました、ただし、大手中心にという方とだと思います。
業界全体で見ても、コンセプトのはっきりしないメーカーさんなどは淘汰されたのではないでしょうか。
100円でも安く、という方は通販で買いますよね。ただ、そのような消費とは対照的に
20代、30代でも家の購入などのライフイベントの中で、
こだわりの家具を求めて、ヒトとは異なる形で個性を出したい、というニーズも生まれてきています。
先ほどもお話させていただきましたが、日本には本当に素晴らしい技術をもった職人さんが多くいます。
が、発信の仕方を知らないんですよね、いいモノも知られなければ良さは伝わりません、
これは本当に根深い問題で、私も今、インフルエンサーの方とのコラボ企画などで、
そのようないい技術をお持ちのモノづくりをされている企業様などに光があたるように
試みていますが、ゆくゆくはその中で仕事が循環するモノづくりコミュニティをつくりたいとも考えています、それがサイドロールの「Roll」=循環させていく、という意味もあります。
良いモノというのは、プロセスエコノミーではないですが、その過程の見せ方も意識しなくてはなりません、
見せ方については、インフルエンサーの方との協業で強く感じさせられた点です。
お客さんも購入する理由を欲しがっているはずなんです。

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今回は小川さんの歴史を少し深堀させていただきました、
なぜ、SIDEROLL FURNITUREが誕生したのかをうかがう中で、
バーンアウトのお話が出たりと、思いがけない展開となりました。
プロ目線での家具や空間の見方・考え方などについてもお教えいただけ、
話の随所に小川さんの在り方を感じるインタビューとなりました。